山形大学地域教育文化学部生活総合学科生活環境科学コース地学(川辺)研究室
2007年新潟県中越沖地震地質災害調査報告

新潟県柏崎市長崎周辺(JR荒浜駅南方)の地震地質被害

山形大学地域教育文化学部生活総合学科 川辺孝幸
山形大学地域教育文化学部地域教育学科3年 奥山明洋・黒木 渉
HomePage:https://www.k-es.org/
E-mail:kawabe@jan.ne.jp

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調査日

2007年7月24日.


調査位置

 新潟県柏崎市の北縁,刈羽村に接する,JR荒浜駅の南方約500mの長崎地区(第1図).
 西側の海岸沿いに細長く延びた東京電力柏崎原子力発電所のある丘陵と東側の別山川の沖積低地の境界部にあり,砂丘砂の二次移動堆積物と思われる砂層が,丘陵を開析した谷の出口に堆積していると思われる.



第1図 調査位置図 国土地理院発行1/2.5万地形図『柏崎』を使用した.

液状化被害の概要

 調査地の中央には,ハスの生えた池があり,水面は,北側の集落の地表から約70cm低位にある.この池は,地形図では,湿地として広く描かれているが,このうち,南半分は埋め立てられていて,池の東側,線路脇の道路から見ると,右に蛇行した放棄河道のように見える(第1図).もともとは別山川に繋がる小川が流れていたと思われるが,JRと道路の盛土によって,出口は細い用水になり湿地化,沼化したと思われる.
 この池に隣接する集落の道路に,液状化被害が発生した.


高浜ほか(2007)の液状化によるプレッシャーリッジ

 第2図の写真で,一見,“蛇行河川のポイントバー”に見える曲部の内側の洲状の高まりは,高浜ほか(2007)によって,池の中に出現した液状化によるプレッシャーリッジであることが報告されている.高浜ほか(2007)の写真は,2007年7月25日に撮られたということであるが,その1日前の2007年7月24日の状態が第2図である.
 アングルが異なるので微妙であるが,一見,前日の状態の方が,プレッシャーリッジの背が低いように見受けられる.第2図では,手前のハスがじゃまになって,プレッシャーリッジがよく見えないからかもしれないが,プレッシャーリッジの1日の成長の結果の可能性も否定できない.
 もし成長によるものなら,まだすぐには収まらない可能性もあるので,後日チェックしてみる必要がある.

 いずれにしても,この周辺の地下水位が高い状態であったことが,池の水位からわかる.この高さの水位が,北側の集落における液状化をもたらしたと思われる.

第2図 ハス池の中央南側に見られるプレッシャーリッジ(高浜ほか,2007) 筆者はてっきり蛇行河川の放棄河道で,ポイントバーが顔を出しているものと思っていた(2007年7月24日18時42分撮影).



ハス池北側の集落内の液状化-噴砂とマンホールの抜け上がり

 ハス池北側の集落では,築年代の古い複数の家屋が,南東方向に倒壊して,複数の道路を封鎖していた.
 ハス池の北側に沿って通る道路では,コンクリート敷きの駐車場のコンクリートの打ち繋ぎ部分と,道路の縁で噴砂が見られた(第3図,第4図).また,下水のマンホールが抜け上がっていた(第5図).

 噴砂した砂の中には,貝殻の小片が混じっていて,おそらく砂丘の二次移動堆積物ではないかと思われる.
 集落での築年代の古い家屋の倒壊は,表層が液状化したことによる地震動の長周期化が影響している可能性が高い.

第3図 池に隣接する道路の液状化被害 路面は上下にうねって,池側にずれている.道路の縁からは噴砂がある.築年代の古い家屋が倒れこんでいる.

第4図 池に隣接する道路の液状化被害 道路に隣接する,コンクリートとの境目は開いて噴砂があり,マンホールが抜け上がっている.

第5図 道路に隣接する駐車場のコンクリートのうちつなぎの部分は開いて噴砂がみられる.

第6図 道路の池側の縁の噴砂.吹き上げた砂の中には貝殻の小片が含まれていた.



JR越後線の盛土の崩壊(柏崎市長崎地内)

 ハス池の南側の湿地を埋め立てた部分に隣接するJR越後線の盛土が,地震によって崩壊した.
 第7図は,崩壊現場の修復中の様子である.
 盛土法面の下部からは,湧水が浸み出していた(第8図).この水を含んだ盛土が,地震動によって液状化もしくは液性限界を超えて斜面が崩壊したと思われる.

第7図 JR越後線の崩壊した盛土

第8図 修復中の盛土の下部には湧水で湿った状態が見られ,地震時には盛土が液状化もしくは液性限界を超えて崩壊したと考えられる.隣接する道路自体にはうねりなどの変状は見られない.



文 献
高浜信行・卜部厚志・鈴木幸治・梶 壮志・福留邦洋(2007)池の中に出現した液状化によるプレッシャーリッ(柏崎・長崎地区).http://geo.sc.niigata-u.ac.jp/~070716/rep07/thm0727.pdf
(2007年7月28日記)


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