山形大学地域教育文化学部生活総合学科生活環境科学コース地学(川辺)研究室
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に関して

山形県天童市高擶の被害

山形大学地域教育文化学部生活総合学科生活環境科学コース 川辺孝幸
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2011年04月03日公開


調査日:2011年04月02日

■ 天童市高擶の被害について

 天童市高擶では,住家の被害は,新旧の家屋のいずれも,外壁の剥離を含めごくわずかしかありませんでしたが,土蔵の被害や,お寺や個人のお宅の灯籠や墓石の転倒などの被害が発生しています.
 特に土蔵については,軸組の変形の被害を含め,外壁の漆喰の剥離や土壁の落下など,高擶地区に現存する土蔵のうち,全体の8割程度で何らかの被害が発生しています.
 下の図に,被害状況と,被害を発生させた力の方向(建物等に働いて変形させて破壊を発生させた力の方向で,地面の震動の方向とは逆です)を示します.




【建物被害−土蔵】

 本日調査した範囲では,計17棟の被害が確認されました.
 被害のほとんどは,土蔵造りの建物で,多くは,白壁の剥離だけの軽微なものから,土壁にヒビが入ったもの,土壁が落下したものですが,柱自体が傾いたものもあります.一方,住家では,土蔵と比べると,土蔵と同じような年代のものでも,ほとんど被害発生していません.住家の屋根は積雪地域のため,トタン板で,土蔵に比べると軽量につくられているからかもしれません.

 土蔵等の壁の剥離の方向性や建物の傾き具合から判断される変形方向からすると,北西〜西北西方向に力が働いたと推測されます.

   

   

   




 また,願行寺は,灯籠が3基転倒していますが,本堂自体も,全体に西側に移動するとともに,西側にやや傾いています.


   





 永源寺の山門は,被害はありませんでしたが,北西方向に数cm移動しています.


【灯籠,墓石などの転倒】

 天童市高擶の墓地では,新しい耐震施工の墓石が多く,倒壊や回転を示す墓石はほとんど見られませんでした.寺院や民家の庭の灯籠の転倒が,いくか見られました.
 転倒方向は,北西〜西北西方向に転倒しているものが多くありましたが,北方向に転倒しているものも見られます.

   





【石造鳥居の被害】

 天童市高擶には,河上神社と皇大神社の2つの石造鳥居があります.
いずれもほぼ東西方向に柱が並んで南向きに建っていますが,河上神社の石造鳥居は花崗岩製,皇大神社のものは安山岩製です.河上神社のものは被害がありませんでしたが,皇大神社のものは被害を受けています.

 河上神社の鳥居は,平成17年に建造された花崗岩製の新しい鳥居で,破損部はありませんでしたが,今回の地震でも,被害はありませんでした.
 皇大神社の鳥居は,東北東方向に傾いたことによって,柱と貫の勘合部と,笠木の柱部分に欠けが生じまています.地震前の状況はこちらです.

   



【調査地域の気象庁震度階級=震度5強】

 以上のように,天童市高擶地域では,住家の被害はほとんど見られなかったものの,土蔵や灯籠などに被害が見られ,気象庁震度階級は『震度5強』であったとみることができます.


【強震動の方向】

 被害を受けた土蔵,灯籠などに働いた力は,北西〜西北西方向を示すものが多く,北東方向,北方向を示すものなどもあります.このような被害に働いた力の方向からすると,南東〜東南東方向,南西方向,南方向などの強震動が働いたと考えられます.
 このような違いが,被害が生じた揺れの時期の違いなのか,地盤の違いによるものなのか,さらに詳細に検討する必要があります.

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    2011/04/03 02:00 公開

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