山形盆地の神社と鳥居の損傷痕から推定した1964年新潟地震の被害

2010年06月08日公開,2019年04月10日更新

元 山形大学地域教育文化学部児童教育コース

川 辺 孝 幸
山形盆地の神社と鳥居のデータベースはこちらです.



46年前の新潟地震の際に、山形盆地でも、震度5強に相当する強い揺
れの地域があることなど、新たな地震動の様子が明らかになりました。


 今から46年前の昭和39年(1964年)6月16日に発生した新潟地震(1964年新潟県下越沖地震)では,新潟市や山形県庄内地方での被害が注目されましたが、震度4とされた山形盆地内でも被害が発生しています。

 当時、山形盆地内では、山形地方気象台(山形市緑町)の震度記録があるのみで、震度4が計測されていますが、強い揺れの方向も地震計が振り切れて不明でした。また、盆地内の個々の揺れの様子はわかりませんでした。
 今回、山形盆地内に分布する約520の神社を調査し、現存する約290基の石造鳥居について被害状況を調査した結果、山形盆地でも、震度5強に相当する強い揺れの地域があることや、軟弱な地下地質によって、伝わってきた揺れとは異なる方向の大きな揺れになる地域があることなど、詳細な地震動の様子を明らかにすることができました。

 わかったおもなことは,
1).石造鳥居の被害状況から推定される震度は,盆地内では,おおむね震度4であるが,震度5強に達する地域もある.
2).盆地の地下の岩盤に伝わってきた地震の強い揺れは,おおむね南北方向の揺れであった.
3).扇状地上では震度4程度であるが,昔の川の跡など場所によっては被害が大きいところがある.
4).軟弱な地層が厚く発達している盆地中央部では震度5強程度と揺れが大きく,揺れの方向も東西方向に変わる.
5).砂礫から砂泥に移り変わる扇状地の末端付近でも,震度5弱程度と,やや揺れが大きくなる.
などです.

 さらに,1964年新潟地震以降も,山形盆地東縁部では,1978年宮城県沖地震や2003年宮城県沖地震,2008年岩手沿岸北部地震などによっても被害を受けているものがあり,震度5弱程度の揺れの範囲があることがわかりました.

 過去の地震による鳥居の被害を調べることで、今後、大きな地震が発生したとき、より狭い範囲での地盤の揺れやすさや、揺れの特徴を予測することが可能となり、地域ごとのきめ細かい防災対策に生かすことができます。
 また、このようなデータをもとに、46年前の新潟地震を経験した方の話を、地域や家庭で伺うことで、防災意識の向上に繋がれば幸いです。

石造鳥居の損傷痕から推定した震度分布
石造鳥居の損傷痕から推定した震度分布と揺れの方向

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